アナリーゼ (楽曲解析)の愉しみ  シューベルト「冬の旅」編        2015.10.17開催


 

今回は初めての試みで音楽をテーマに取り上げてみました。
演奏会ではなく、「演奏家が語る音楽の話」です。 

 

演奏家はどんなふうに楽譜を読み解き、音楽の世界を繰り広げていくのか。

シューベルトを題材に、時代背景からシューベルトの苦悩、そして楽曲の解説と、演奏会とは違ったかたちで音楽について、ピアニストの吉井さんから語っていただきました。

 

音楽は神様からの贈り物

 

第一部は「音楽の秘密」と題して、音符理論の基礎について教えていただきました。

 

まずは、ドレミの音階の話から・・・


ドとレの間には半階が2つ、レとミの間にも半階が2つあり、ミとファの間には1つ...  と半音の配置が 2,2,1,2,2,2,1で長調の音階が出来、全部で12の長調がある。


ホワイトボードに鍵盤を描いて音階の基本の説明から始まりました。

 

 でも、学校で教わった音楽の時間と違うのは、ここから・・

 

音には引力があり、シはドに引っ張られる。ファはミに引っ張られる。
調にはそれぞれ性格があり、そして2つの音の音程で、例えば 2度の(ドとレ)は不和が生じる音、緊張が生じる音の組み合わせ。逆に3度(ドとミ)は愛を表す ”男女の愛”、 6度(ドとラ)も調和、仲が良い、でも3度ほどくっついていない ”親子の愛”

 

段々、吉井ワールドに引き込まれていきます。

 

どんなものでも、弦を半分にすると1オクターブ上がるそうです。
輪ゴムをピーンと張ってはじくと音がする。その弦の半分を指で押さえて、また音を出すと 確かに高い音に変わります。実際に用意した箱に輪ゴムを張って音を出してみてくれました。

 

4分音符の半分が8分音符ということは皆さん学校で習いましたよね。
けれど、これは絶対的なものではなく、相対的なもので、例えば、4分音符が速ければ、その半分の8分

音符も速くなるなんて、知らなかったです。

 

♩♫ のリズムは運命に支配されている ” 自分は行きたくないのに行かねばならない ” こと を表現することもできれば、逆に楽しい躍動感を表すこともできる。(楽しさを表現する時は、間に空気を膨らませるような感じに弾くのだそうです)

 

音符たちが、まるでディズニー映画の一コマのように意思を持って 動いているようです。

 

一方、三連音符には様々な表情があって、 シューベルトのセレナーデに登場してくる三連音符は切ない恋のリズムなのに、これが八分音符だと切ない想いが出てこない。

 

そしてフォルテからピアニシモまでの音の強弱も、音の速さと同様に、絶対的なものではなく、相対的なものところどころで実際の音楽を流しながら、そして、吉井さん自身の演奏も交えながら 音符の意味を教えていただきました。

シューベルト「冬の旅」

 

いよいよ第2部は、シューベルトの歌曲の解説です。


シューベルトは31歳で亡くなるまでに600曲以上を作曲した、誰もがその名を知っている 偉大なる作曲家のひとりです。短い生涯の中で連作歌曲集を3曲創作しています。 今回は、その中で「冬の旅」を取り上げます。

  • 美しき水車小屋の娘
  • 冬の旅
  • 白鳥の歌

20代で病気になり、その頃からずっと死を意識して生きてきたシューベルト。 「冬の旅」に描かれた男性の心情を、平行して晩年のシューベルトについても触れながら解説。

 

一部で説明のあった音程、リズム、強弱を使って作曲家が音楽に変化させる。

演奏家は譜面をアナリーゼ(忠実に読み取り)して音に変えていく。


作曲家と音楽家の個性が相見えて千差万別の音楽が生まれるのですね。

説明と併せて、「冬の旅」から3曲を選んでCDで鑑賞し、 吉井さん持参の菩提樹のお茶をいただきながら、香りも愉しみました。

  • 第5曲 菩提樹
  • 第1曲 おやすみ
  • 第24曲 辻音楽師

 

最後に「アヴェマリア」を鑑賞


「アヴェマリア」には、戦時下に「交渉に向かう父をお守りください」 「洞窟にこれから隠れる自分をお守りください」という意味があるそうです。


救いようのない悲しみに満ちた「旅」で空っぽになった心に、 「救い」が注ぎ込まれるようなエンディングでした。


吉井さん、ありがとうございました。


■ プレゼンター:
・ピアニスト 吉井美由紀

 

■ 開催場所:ギークオフィス恵比寿